借地人からの相談 

借地で地主の承諾が必要なのはどんなとき?相続・建物の賃貸・駐車場などをわかりやすく解説

借地に長く住んでいると、こんな疑問が出てくることがあります。

「父から借地を相続したけれど、地主の承諾は必要?」

「借地の上にある自分の家を人に貸したい」

「土地の空いている部分を駐車場として貸しても大丈夫?」

「借地人が会社の場合、会社の株主が変わったら地主の承諾が必要?」

借地では、何かするたびに地主の承諾が必要と思われがちですが、実は、地主の承諾が必要な場合と必要でない場合があります。

ポイントになるのは、

「誰が土地を借りているのか」
「第三者に何を貸したのか」
「実際に土地を使っている人が変わったのか」

という点です。

今回は、これまでの裁判例をもとに、できるだけ分かりやすく説明します。


1.借地権を他人に売る場合は、原則として地主の承諾が必要

まず一番分かりやすいケースです。

地主から土地を借り、その上に自分の家を建てている人が、その建物を借地権付きで第三者へ売却する場合です。

この場合、建物だけでなく、その建物を建てておくための土地の賃借権も買主へ移ることになります。

そのため、原則として地主の承諾が必要です。民法612条も、賃借権を譲渡したり、借りている物を転貸したりする場合には、賃貸人の承諾を必要としています。

地主が承諾してくれない場合には、一定の条件を満たせば、借地借家法19条によって地主の承諾に代わる裁判所の許可を求める方法もあります。東京地方裁判所も、この制度について案内しています。
第1 借地非訟とは | 東京地方裁判所/東京簡裁以外の都内簡易裁判所

ですから、「地主が承諾しないから、借地権は絶対に売れない」というわけでもありません。


2.親から借地権を相続した場合は、地主の承諾は原則不要

では、借地人である父親が亡くなり、子どもが借地権を相続した場合はどうでしょうか。

この場合は、原則として地主の承諾は必要ありません。

相続は、借地権を第三者へ売ったり贈与したりするものではなく、亡くなった人の権利や義務を相続人が引き継ぐものだからです。

例えば、

父が借地人
↓
父が死亡
↓
長男が借地権を相続

という場合に、地主から改めて借地権を取得するわけではありません。

したがって、相続したことについて地主の「許可」をもらう必要はありません。

ただし、今後の地代の支払いや連絡のためにも、相続が発生して借地人が変わったことは地主へ知らせておいた方がよいでしょう。


3.兄弟で相続した借地権を一人にまとめる場合は?

もう少し複雑なのが、相続人が何人もいる場合です。

例えば父親が亡くなり、子ども4人が借地権を共同で相続したとします。

その後、「この家には長男が住むから、借地権も長男にまとめよう」となることがあります。

最高裁昭和29年10月7日判決では、共同相続した借地権について、共同相続人の一部から他の共同相続人へ持分が移ったケースで、無断譲渡を理由とする解除を認めませんでした。

もともと借地人ではなかった第三者が突然入ってくるケースとは違うからです。

つまり、

相続人A・B・C・D
↓
借地権をAにまとめる

という場合と、

借地人A
↓
まったく関係のない第三者Xへ売却

では意味が違うということです。


4.借地上の自分の建物を人に貸すだけなら、地主の承諾は原則不要

ここは借地人の方からすると、意外かもしれません。

地主から土地を借りて家を建て、その家を第三者に貸す場合です。

例えば、

地主 → 土地をAに貸す
A → 自分の建物をBに貸す

というケースです。

Bは当然、その建物に出入りするために土地も利用します。

「それなら土地をBに又貸ししたことになるのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、東京地裁昭和34年9月10日判決は、借地人が自分の建物を第三者へ貸しても、それだけでは土地の転貸にはならないと判断しています。

借地人はあくまで「自分の建物を所有するため」に土地を借りています。

その建物を人に貸したからといって、土地そのものを第三者へ貸したことにはならない、という考え方です。

したがって、通常は、

「借地上の建物を貸す=地主の承諾が必要」

ではありません。

ただし、借地契約に特別な約束がある場合などは別途確認が必要です。


5.土地の空いている部分を駐車場として他人に貸したら?

これに対して注意したいのが、土地そのものを第三者へ使わせる場合です。

例えば、借地の一部が空いているので、

「せっかくだから月極駐車場として近所の人に貸そう」

というケースです。

これは先ほどの「建物を貸す」ケースとは違います。

第三者に駐車スペースとして土地を独立して使わせ、対価を受け取っているのであれば、土地の転貸に当たる可能性があります。

その場合、地主の承諾が問題になります。

ここで確認したいのは、

第三者に貸しているのは「建物」なのか、それとも「土地そのもの」なのか?

ということです。

例えば、アパートの入居者が敷地内の駐車場を付随して利用している場合と、借地人が空いている土地を一般の人に月極駐車場として貸している場合では、事情が違います。


6.昔の地主から「駐車場に貸していい」と口頭で言われていた場合は?

古い借地では、ここが問題になることがあります。

「30年前に先代の地主さんから、空いているところを駐車場に貸していいと言われた」

ところが地主が代替わりして、

「そんな話は聞いていない。無断転貸だから土地を返してほしい」

と言われるケースです。
「先代地主から『駐車場に貸していい』と言われていたのに、相続後に無断転貸と言われたら?」 | 合同会社I-Planning

この場合、

「書面がない=必ず無断転貸」

とは限りません。

口頭の承諾でも、直ちに無効になるわけではないからです。

問題になるのは、本当に承諾があったことを証明できるかです。

いつから駐車場として使っていたのか、先代地主はそのことを知っていたのか、地主が現地を見ていたのか、何十年間も異議なく地代を受け取っていたのか、写真・手紙・領収書・当時を知る人などが残っているか。

こうした事情を一つずつ確認する必要があります。

古い借地では、現在の契約書だけを見ても分からないことが少なくありません。


7.借地人が会社の場合、株主が変わったら地主の承諾は必要?

借地人が個人ではなく会社の場合もあります。

例えば、

株式会社Aが土地を借りている
↓
A社の株式が別の人へ売却される
↓
A社の経営者も変わる

というケースです。

地主からすると、

「会社の中身が全部変わったのだから、借地権も譲渡したのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、最高裁平成8年10月14日判決では、会社の持分がすべて第三者へ譲渡され、経営者が変わったケースでも、それだけでは民法612条の賃借権の譲渡にはならないと判断されています。

理由は、土地を借りている会社自体は変わっていないからです。

簡単にいえば、

会社の中の人が変わったことと、土地を借りている人が変わったことは別。

ということです。

もちろん、借地契約に会社の支配権変更について特別な条項がある場合などは、別途契約内容を確認する必要があります。


8.無断転貸なら、すぐに借地契約を解除される?

ここも大切です。

仮に地主の承諾が必要だったのに、承諾を取らずに借地権を譲渡したり、土地を第三者へ貸したりしていたとしても、

「無断転貸があった=必ず借地契約終了」

とは限りません。

裁判では、その行為によって地主との信頼関係が壊れたといえるかも問題になります。

例えば、誰に貸したのか、土地の使い方がどのくらい変わったのか、地主にどんな不利益があったのか、地主が以前から知っていたのか、といった事情によって判断が変わることがあります。

ですから、地主から「無断転貸だから契約を解除する」と言われた場合でも、すぐに「もう借地権はなくなった」と考えるのではなく、まずこれまでの経緯を確認することが大切です。


まとめ|地主の承諾が必要かは「実際に何をしたのか」で変わります

借地について地主の承諾が必要かどうかは、単純に「人が変わったか」だけでは判断できません。

大まかに整理すると、

こんな場合地主の承諾
借地権付き建物を第三者へ売却する原則必要
親の借地権を相続する原則不要
相続した借地権を遺産分割で一人にまとめる原則不要
借地上の自分の建物を人に貸す原則不要
土地そのものを第三者へ駐車場などとして貸す必要となる可能性が高い
借地人である会社の株主・経営者が変わるそれだけでは原則不要

借地では、契約が何十年も続き、途中で相続や地主の代替わりが起きていることも珍しくありません。

そのため、

「契約書に書いてあること」だけでなく、
「いつ、誰が、誰に、何を貸したのか」
「地主はそれを知っていたのか」
「これまで地主とどんなやり取りをしてきたのか」

を最初から時系列で整理することが重要です。

特に、地主から突然「無断譲渡だ」「無断転貸だ」と言われた場合には、慌てて借地を返還したり、言われるまま承諾料を支払ったりする前に、まず契約書とこれまでの経緯を整理してみることをおすすめします。

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