借地借家法では、「建物の所有を目的として土地を借りること」が借地権の成立要件となっています。一般的に借地権で私たちがイメージするのは通常の住宅(一戸建てや区分マンション)が多いのですが、実際にはどのような建築物が借地権でいう「建物」に当たるのでしょうか。
建物については、借地借家法では決まった定義は記載されておりません。
そのため、不動産登記規則、不動産事務取扱手続準則、判例を参考に判断されることになります。
建物と認められるための基本的な要件
不動産登記規則第111条
建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。
建物の所有を第三者へ主張するにはその所有者で「登記」されていなければならないため、原則として、不動産登記規則通りの建物でなければなりません。
① 屋根と壁があること
② 土地に定着していること
③ 本来の用途(使用目的)で利用できる状態であること
一戸建て住宅や、アパート、工場、倉庫などは基本的には該当します。一方で、簡単に移動できる物置、コンテナを置いただけ、テント、カーポートなどは「建物」にはなりません。登記されているのを見たことないですよね。
また、不動産事務取扱手続準則第77条では、建物として取扱うものと取扱わないものが定められております。ただ、企業が所有しているような規模が大きいもので、一般の方が通常所有しているようなものではないので、気になる方はご確認いただけるといいかなと思います。判断に迷う場合の基準を設けられたと思います。詳細は、こちらをご覧ください。→https://www.moj.go.jp/content/001394394.pdf
では、「建物」であれば借地借家法の適用されるのか
答えは「いいえ」です。
有名な最高裁判例があります。
昭和50年10月2日判決
事案
土地はバッティング練習場として貸し出されておりました。その土地には、簡素な建物(管理人室事務所、倉庫など)の建築が認められていました。借主は「建物があるのだから借地法(現・借地借家法)の適用がある」と主張しました。
最高裁の判断
土地賃貸借の主たる目的はバッティング練習場の経営であり、建物の所有は従たる目的にすぎない。よって借地法は適用されない。
「建物が土地利用の中心なのか、それとも事業の付属物なのか」を判断した判例です。
最高裁判例では、建物の規模などを基準に借地借家法の適用を判断したわけではありませんでした。重要なのは、その土地を借りた主たる目的が建物所有にあるかどうかです。「契約の主たる目的が建物所有かどうか」で判断する。ということです。
「建物であれば何でも適用」というわけではないですね。
まとめ
借地借家法には「建物」の定義はありませんが、実務では不動産登記規則や裁判例などを参考に判断されています。また、建物として認められたとしても、それだけで借地借家法の対象になるわけではありません。重要なのは、「建物の所有を目的として土地を借りているかどうか」です。
借地に関するトラブルでは、「これは法律上の建物に当たるのか」「借地借家法の適用があるのか」が争点となることも少なくありません。個別の事情によって結論が異なる場合もありますので、お困りの際は専門家へ相談することをおすすめします。