先日、不動産会社のホームページを見て安い物件があったので、よく見てみると「地主が売却を承諾しないため借地非訟手続きとなる」と記載がありました。なかなかハードルの高い物件を販売しているんだなと思いながらも、一般のエンドユーザーの方は「借地非訟」といってもよくわからないと思いますので、ご紹介していきたいと思います。
まず前提として、借地権の譲渡には、地主の承諾(許可)が必要になります。この承諾なく第三者へ売却(譲渡)してしまうと、借地契約が解除されてしまう恐れがあります。では、地主が承諾しない場合、借地権は譲渡できないのでしょうか。そこで、借地権者を保護するために借地借家法第19条があります。
借地借家法第19条
1 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者(地主)に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は借地権者の申立てにより、借地権設定者(地主)の承諾に代わる許可を与えることができる。(以下は簡易的に記載)この場合、裁判所が許可を出すにあたって、譲渡承諾料(借地権者から地主へ支払いする金額)を決めることができる。
2 略
3 第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
4 以下 略
では、具体的にはどのような段取りを踏んでいかなければならないのかということになります。
地主が承諾しない場合の借地権の譲渡には、条文にもあるように裁判所の許可が必要になります。期間としてはおおよそですが、半年~1年はかかります。その借地権付建物の購入を希望する方は、現金購入が可能で、借地非訟手続きに協力(どのように借地権を利用するのかということや年収や勤務先などの素性を明らかにする)しなければなりません。また、裁判所でのやり取りとなりますので、借地権付建物購入の不動産売買契約を事前に締結しなければなりません。
購入希望者は手続きに協力したので、すぐ買えるのかというと、実はその前に地主の「先買権」というのが存在します。これは、条文の第3項に記載されており、地主が「では、私が買います」と言える権利です。もし地主が購入するということになると、借地権の売買契約は白紙解除となります。
地主が購入しないということになって、やっと借地人から購入希望者への借地権付建物の引渡しが行われます。同時に、地主と新たな借地人との間で土地の賃貸借契約を締結するという流れになります。
このような手続きを踏んでいくので、一般のエンドユーザーでは地主と円満な関係というのは難しそうですよね。新たな借地人は、借地権に関して理解があって、今後も地主と時間をかけてうまくやっていかなければなりません。借地権の知識に精通していて、ある程度現金で支払いができるような資金力のある方(不動産会社の社長等)が新たな借地人候補になると思います。買主が限定されるので、価格も安くなってしまうことがほとんどです。地主にとっても新たな借地人と関係を築いていかなければならないので、なかなか大変です。
借地非訟になる前に、普段から双方のコミュニケーションは重要だと思います。地主も借地人もそれぞれ大切な資産を保有していることは理解しているのですから、何かあった際に互いに協力できる体制を作っていくことをお勧めします。どうしても地主とウマが合わない、いつも無理難題を押し付けてくるということがありましたら、お気軽に当社までお問合せください。一緒に解決方法を探っていきましょう。
今回は、インターネットで「借地非訟」の物件が販売されていたので、記事にしてみました。借地権で何かお困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。