親族間での土地の貸借をしている状態で、親族の土地使用者が固定資産税などの必要経費のみ払っている場合は、使用貸借となります。土地の売却をするのであれば、使用貸借の状態を解消をしなければなりません。仮に使用貸借の状態であっても物理的に土地を第三者へ売却することは可能ですが、買主はまず現れないか非常に安い価格となります。親族間であっても無償の土地の貸し借りはやめるべきで、それは将来相続が起きたときに揉める原因になります。親子間の使用貸借の解消をめぐる判例でもよっぽどのことがない限り、解消は難しそうです。
将来的な相続を考えて今のうちに売却をしたい
土地所有者の父親からのご相談です。父親の土地に娘婿家族が建てた一戸建てがあるのですが、将来的な相続と老後資金を考えて土地を処分しようと思っております。娘婿に土地の使用貸借をした理由は、両親の将来的な介護をするからとのことでしたが、話し合いの結果、将来的に施設に入ることになったためです。そこで、娘婿に土地を購入しないか話をしたところ、金銭的に厳しいということで断られてしまいました。娘婿は固定資産税分の支払いはしておりますが、毎月の地代は支払っておりません。そのような状態で土地を売却したいと考えています。
土地の使用貸借を解消するのは厳しい
現在の状況は使用貸借の状態ですので、そのままでの売却は難しいと考えられます。まず、使用貸借を解除するには、4つの条件があって①期間を定めた場合にはその期間が満了したとき、②期間を定めず、使用収益の目的を定めた場合はその使用収益が終了したとき、③借主が死亡したとき、④信頼関係が破壊されたとき、という①~④に該当しなければ解消は難しくなります。今回は、使用貸借をした目的を達成することができないから解消したいとのことですが、②の使用収益の目的は達せられませんが、④の信頼関係が破壊されたわけではなさそうですし、娘婿名義の建物の築年数が15年程度しか経過していないので、解消は難しいと思われます。
今すぐに売却を希望されているのであれば、娘婿に売却をする方法しかないように思います。第三者が土地を購入して立退き等も可能ではありますが、立退料が発生するためかなり安い金額になってしまいます。娘婿が融資を組むことができれば、現在の住宅ローンに組み込める可能性もあります。じっくりと話し合いをするべきだと思います。
最後に使用貸借状態で、仮に相続が発生してしまった場合、使用貸借の土地は自用地評価となるため、貸宅地(他人と土地賃貸借契約を締結し、他人が使用収益している土地)の評価減をされず、多額の相続税がかかるため、気を付けなければなりません。 国税庁HP「宅地の評価単位」→https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/02/04.htm
土地の使用貸借はやめるべき
たとえ親族間であっても、土地のような資産は無償で貸借をしてはいけません。将来的に困ってしまうのは貸主であって、相続対策も立てられず周囲の親族も困ってしまいます。どうしてもその土地に住みたいというのであれば、親族間であっても借地契約を締結し、毎月の地代の支払いをしてもらうことが重要です。無償ということであれば、使用貸借の契約書を作成してください。期間や使用収益の方法等詳細に記載しておけば、使用貸借を解除しやすくなります。