地主からの相談

親子間の土地の使用貸借を終了させたいが、どうすればよいか。

 両親が土地、子がその土地上に建物を所有し築30年の木造家屋に居住しておりますが、長男が使用貸借にした際の約束を守らないので、使用貸借を解除したいという問い合わせがありました。

問い合わせの内容

 土地を貸している両親からの問い合わせで、現在都内の土地を所有しており、そこに長男が一戸建てを所有し居住しております。長男はそこで事業も行っており、経営も順調です。土地を使用貸借するにあたって、事業が軌道に乗ってきたら両親を扶養し、もう一人の息子である次男も社員として雇うという約束をしましたが、もう何年も約束を果たそうとしません。最近では連絡しても折り返しの電話もほとんどない状況です。土地は使用貸借なので無償、かつ固定資産税についても両親が支払っております。長男に土地を買ってもらえないかと言ったこともありましたが、返答はありません。次男からは、将来的な相続で揉めるのは確実なので、今のうちに長男の使用貸借を解除して土地を売却して欲しいと言われており、両親もその方向で進めようと考えております。

回答

 使用貸借を解除することは可能だと思います。判例時報第506号37頁によると、昭和42年の判例となりますが、やはり親子間で土地の使用貸借の解約が有効とされております。この判例はお問合せ内容に似ておりますが、子が使用貸借時の約束を反故にして、当事者間での信頼関係が崩壊したため、使用貸借を解約が有効となりました。よって、今回のお問合せいただいた件について、裁判で争うことになると思いますが解約できる可能性はあると考えております。ただし、書証等がなく、また長男の負担で築30年ではありますが一戸建てを建築しているため、民法598条2項にある使用貸借の解除条件の一つとして「借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過」しているかどうかについては、裁判所の判断になります。

まとめ

 今回のご相談内容は、親子間の関係が悪くなり、断絶状態からのお問合せであったため、決着は裁判しかないと思います。このようにならないためには、いくら親子間であっても資産の賃借については書証に残すということと、コミュニケーションを密に取るということが必要ではないでしょうか。今回のケースで解決する前に相続などが発生した場合は、残された相続人に多大な負担がかかってしまいます。すべてを口頭で雰囲気に委ねることなく行うことがお互いの信頼関係を保つ方法だと思います。

参考 最高裁判例 事件番号昭和42(オ)821 建物収去土地明渡請求事件 判例集 民集第21巻9号2460頁

 

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